” 菌によるトネリコの枯れ:英国 ”のニュースで考えたこと

10/5のニュースに、”セイヨウトネリコを枯らす菌が英国で拡がって問題になっている”という内容のものがありました。
この記事の概要は、

  • この菌は過去20年に渡り欧州各地でセイヨウトネリコに壊滅的な被害を与えており、すでにデンマークではトネリコ種の樹木の9割が死滅、広範囲に渡り森林が消滅している。
  • 英国では今年2月輸入材から初めてこの菌が見つかり、以来必死の努力にもかかわらず10万本が死滅。
  • 政府は前月トネリコの輸入、国内の株・鉢植え・種子の移動を禁止する措置を発表。
  • 1970年代に、ニレ立枯病で英国内のニレの木が壊滅した悪夢が再燃している。
  • 英国では国内の森林の5.5%にあたる約13万ヘクタールがセイヨウトネリコを主としており、これらの森林以外にも約1200万本のトネリコが生育している。

といったものです。
(ニュースは、「トネリコ 菌 英国」などで検索すると出てきます)

この記事に目が留まるのは、樹木に携わる仕事をしているからですが、ちょっと見ただけで思うこと、知りたいこと、考えることなどがてんこ盛りであります。
普通の人では流してしまって目にも留まらないか、本数も多そうだし何か怖いなと思うか、ちょっと知っている人でしたら日本でも松で似たような話があったような・・と思うくらいかも知れません。
でも樹木医として、庭で木を植えているものとしては見逃せません。


本当にポイントがたくさんあるので、今回は熟考せずに大まかに拾い出していきたいと思います。

  • まずは枯れる原因。菌が枯らすというだけでは非常にぼんやりしているので、菌が木のどこにどのように作用して枯れるのか、菌はどのように感染して移っていくのか等の詳細が重要(解明しているのかな?)。
    • 対策するにしても原因が詳しく分からないと、取りようがない。
    • 移動の禁止をしているということは、感染は虫や動物など広範囲を移動できるものが関わっていないということ?外来の菌なのでとりあえずの措置?
    • 今年2月に初めて見つかって以来必死の努力をしてきた→前月(10月?)移動禁止の措置を発表。8か月間はどのような対策を取っていたのだろう?
    • 初見から8ヶ月で10万本枯れるのは非常に速い気がするので、やはり原因・感染のメカニズムが興味深い。
  • 菌は外来のようだが、原産はどこであろうか?原産地ではトネリコの仲間はどうなっている?
    • 原産地では、菌などの原因に耐性のある種が生き残っていたりする(日本の松枯れの例)。
  • トネリコ種の9割が死滅とあるが、種(正確には属?)の中で耐性(菌の影響の受けやすさ)に違いはあるのだろうか?
    • 日本でトネリコと言えば、シマトネリコアオダモなどがよく使われており、他にも何種類か自生であるが、耐性は?
    • セイヨウトネリコは学名 Fraxinus excelsiorシマトネリコは Fraxinus griffithiiアオダモは Fraxinus lanuginosaと近い仲間(同じ属で種が少し違う)なのでどうなんだろう?(学名は調べてしまいました)
  • 今日本で樹木が短期間で集団的に枯れてしまうのは、松枯れとナラ枯れがあるが、共通点や参考にできるところはあるだろうか?
    • 世界3大樹木流行病(ニレ立枯れ病はその一つ)や、松枯れ(マツノザイセンチュウ病)の例をみても、被害を食い止める(完全に侵入を防ぐ、または侵入したものを完全に消滅させる)のは難しいのだろうか?

ざっとなんですがたくさんありますし、?ばかりです。
研究者でないと判明できないところも多いですが、今後も注目して考えていきたいです。

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2012-05 アオダモ 
2006-10 シマトネリコ
(文字ばかりだったのでトネリコの仲間の写真です)